マイクロメータのメンテナンス。
前回より大分日が経ちましたが久々に更新します。
今回はマイクロメータの清掃・調整を行いました。
↑今回調整を行うミツトヨ製マイクロメータです。 筆記体のロゴが歴史を感じさせます。
ちなみにこのマイクロは中古工具屋さんにて700円程度で入手したものです。
外観を確認するとアンビル(測定子)部分には細かな傷が確認できるため大分使い古されたものだということが分かります。 しかし個人で使う程度にはそれほど差し障りはないものだと判断し購入に至りました。
一方でスピンドルは重く機器内部で油の固着が起きていることが分かります。
そのため一度バラして内部の油分を除去します。
↑まずはクランプ機構を取り外します。
↑マイナスネジを外すと構成部品が次々と外れます。おおよそどのマイクロでもこの基本構造は一緒だと思います。
↑次にラチェットを付属のスパナで緩めます。 緩めて外してしまうのではなく1㎜ほど緩める程度で十分です。
↑続いてシンブルを手で押さえながら緩めたラチェットの頭をプラスチックハンマー等で軽くはたきます。そうするとスピンドルからシンブルが外れます。
叩くと外れるというのはスピンドルとシンブルの締結方法がテーパーによるためです。
このとき注意して頂きたいのが間違ってフレーム側を押さえて叩かないようにすることです。フレーム側を押さえて叩いてもシンブルは決して外れません。しかもスピンドルのネジ部に必要以上の力が加わり機器の破損に繋がります。
↑シンブルが外れたらラチェットを取り外しシンブルを抜き取ります。
↑シンブルを外したらスピンドルを取り外し真鍮のテーパーナットも取り外します。
※ここで注意ですが、テーパーナットを頻繁に取り外すことはあまりお勧めできません。 ナットの位置はメーカーが厳密に調整したものであるため安易に緩めるとその後の使用で測定誤差が生じる可能性があります。
テーパーナットにはキースパナ用の鍵穴があるためそれを使って外します。 取り外しの際テーパーナットの締め付け位置とトルクを手やマーキング等を使って覚えておく必要があります。
以上で必要範囲での分解が済んだため次に各部品の清掃を行います。
↑クランプの構成部品等小さなものは、まとめて洗います。
上の画像のように機密のとれた容器に部品をまとめて入れ、アルコール等洗浄液を浸したらシャカシャカ振るのが手っ取り早いです。
写真は撮りませんでしたが洗浄後の容器底面に鉄粉等のスラッジが結構溜まっていました。
↑次にスピンドルを洗浄します。
上の画像は洗浄後に撮ったものですがスピンドルおよびネジ部分に黒く劣化したオイルが付着していたため(スピンドルの動きが悪かったのは多分コレのせい)歯ブラシ等毛が柔らかいものを使って丁寧に除去していきます。
その次に赤サビが発生していたスピンドル先端部分およびテーパー部をスコッチで磨いていきます。
当然スコッチは研磨剤であるため、いくらスピンドルが強靭とはいえ磨きすぎると面が摩耗していくものです。そのため磨き作業は赤サビが取れる程度で十分なものだと思います。
それと画像は撮りませんでしたがフレームのスピンドル雌ネジ部分にも油だまりが有ったのでより細い毛虫のようなブラシで丁寧に落としました(ここもまた根気のいる作業でしたので写真を撮る余裕が無かったです)。
↑次に注油です。 本来ならミシンオイルで済ませてしまおうかと思ったところですが折角なんで専用のオイル”ミツトヨミクロール”を使っていきます。38ml入りで2000円↑という品物で今回のマイクロ以上に高くつきました。
↑先ほどの高級オイルを塗っていきます。 鉄との親和性が良いのか一か所薄く塗っただけでジワリと周りに浸透していきます。ネジ部やテーパー部分にも程よく塗ります。
スピンドルの他フレームの雌ネジやクランプ、その他サビが生じやすいであろう箇所に塗布していきます。
↑オイルを一通り塗ったらいよいよ組み立てです。 組み立て作業は基本的に先ほどの分解作業の逆を辿ればよいです。
ひとつポイントといえばシンブルの固定ですが、うまく目盛を合わせるには(あくまで自己流です)マスターを軽くかませた状態(簡単に抜ける程度、アンビルに油膜を張らせておくと楽かもしれません)でクランプを固定します。
そしてマスターを抜き取ったらシンブルを被せてラチェットネジをよく締めます。 こうすることで後の目盛調整が少なく済むために作業が楽になります。
↑そして最後に付属の鍵スパナで目盛の微調整を行います。
なお、分解時にテーパーナットを取り外した場合はナットを元の位置まで締め付け、その後に複数のマスターゲージ(ブロックゲージでも可)を用いながら各ゲージの寸法通りに目盛が行くようナットの締め付けをキースパナで調整します。 私の場合は合わせ用のマスターとして会社にある栓ゲージを用いました。
作業後にシンブルを回してみたところ購入時の重く乾いた感触はすっかり消えて新品とも言えるようなスムーズな回転になりました。 精度の方も価格の割に良く出ており、アンビルの摩耗を考慮してもおそらく±1/1000mm程度であるものと思います。
中古故に心配していた落下等によるフレームの変形も特には無さそうです。
↑最後に付属のくたびれたケースにしまって作業完了です。今度緩衝剤でも入れてやろうと思います。今後長くお世話になるであろうものなので・・・
ちなみにこのマイクロは購入時からラチェットの調子が悪かったために部品取り用のマイクロから移植してあります。
なお機器によってはラチェットのトルクに差があるので移植の際には注意が必要です。
とりあえず今日はここまで。
次回はどうしようかな(笑